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交通事故

交通事故の事故車の評価損(格落ち損害)

交通事故の事故車に関する,売却する場合の価格の下落分に関する評価損(格落ち損害)については,概ね,裁判例の傾向として,①外国車又は国産人気車種で初度登録から5年,走行距離で6万キロ程度,②国産車で3年,走行距離で4万キロ程度以内であれば,評価損が認められる可能性は高いと思われます。ただし,評価損の金額は,通常は修理費の20%から40%に相当する分だけとなるでしょう。

交通事故の事故車の評価損(格落ち損害)

事例

 Aさんは,2年前に国産人気車を新車で購入し,その愛車をとても大切に乗っていて,走行距離も2万キロ程度でした。ところが,そんなある日,Aさんが愛車に乗って信号待ちしているところに,Bさんが運転する車が追突してきました。Aさんは,その事故で,怪我などはしなかったのですが,車の修理費は,見積もりをとると100万円もかかるとのことでした。
 これに対して,Bさんの加入している保険会社は,車の修理費,修理中の代車費用は負担すると言ってくれました。しかし,Aさんが,車のディーラーに確認すると,Aさんの愛車の評価額は事故前ならば300万円だが,事故後に修理を終えた状態の評価額は150万円に下がるとのことでした。Aさんは,自分が大切にしている愛車が事故車になり,売却する際にも事故車扱いで金額が下がってしまうことから,そのような車の格落ち分の賠償をして欲しいと保険会社に申入れると,保険会社は,修理によってAさんの愛車の機能は元通りになるので,そのような格落ち分の賠償は認められない,と回答してきました。
 Aさんは,車の格落ち分の賠償を求めることはできないのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 Aさんの愛車に対する思い入れはもっともですし,事故車になってしまったら,それを売却する際に,売却価格が下がってしまうことは普通のことで,このケースでも150万円も価格が下がってしまっているんですから,Aさんは車の格落ち分の賠償を求めることができると思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 Aさんの愛車は,事故により150万円価格が下がってしまったといっても,修理すれば元通りに戻るわけですよね。また,新車で買ってから数ヶ月というならともかく,2年も経っている車なんですから,Aさんに愛車に対する思い入れがいくらあっても,Aさんは,車の格落ち分の賠償までは求められないと思います。

弁護士の見解

 今回のケースでは,Aさんは,車の格落ち分の賠償を求められる可能性が高いと思います。
 今回のAさんの車の格落ち分の損害のことを,法律用語では「評価損」などと呼びます。
 今回のケースのような,売却する場合の価格の下落分に関する評価損を,賠償として認めるかどうかは,争いはあるんですが,概ね,裁判例の傾向として,①外国車又は国産人気車種で初度登録から5年,走行距離で6万キロ程度,②国産車で3年,走行距離で4万キロ程度以内であれば,評価損が認められる可能性は高いと思われます。
 今回のAさんの車は,国産人気車種で,事故時点で,初度登録から2年,走行距離で2万キロ程度だということなので,Aさんは,評価損の賠償を求めることができる可能性は高いと思われます。

花子さんの質問

 では,Aさんは,愛車の評価額が300万円から150万円に下がった,差額の150万円の賠償を受けられるということになるんですよね?

弁護士の説明

 いいえ。そこは違うんです。
 裁判例の多くは,車の評価額が下がった,差額の150万円分の賠償を受けられるという考え方をとってはいません。
 裁判例上は,「修理費に対する一定割合」,通常は修理費の20%から40%に相当する分だけを,評価損として賠償の対象とするという考え方をとるものが多いようです。
 このケースのAさんの場合,修理費100万円の20%から40%相当の20万円から40万円の範囲内で,評価損の賠償を受けることになると思われます。

※本記載は平成30年5月7日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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