地域への貢献を目指す安心と信頼の法律事務所 西川総合法律事務所
交通事故

車の所有者への賠償請求

自動車損害賠償保障法3条では,「自己のために自動車を運行の用に供する者は,その運行によって他人の生命又は身体を害したときは,これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と規定されており,車の所有者は,「自己のために自動車を運行の用に供する者」(「運行供用者」)として,他人の生命又は身体を害した人的な損害に限って,賠償の責任を負うことになります。

車の所有者への賠償請求

事例

 Aさんは,車に乗って赤信号で停止していたところ,Bさんが運転する車に追突されてしまいました。Aさんはむち打ちで6か月間通院することになり,Aさんの車の後側はバンパーがへこみました。
 AさんはBさんに損害賠償を請求しようとしましたが,Bさんは20歳の学生で収入はなく,同居している父親のCさんから車を借りて運転していたということで,さらに,Bさんの乗っていた車は任意保険には加入していないとのことでした。
 そこで,Aさんは,収入のないBさんに損害賠償を請求しても意味がないと考え,Cさんに治療費や車の修理費を請求したいと考えています。AさんはCさんに対して賠償の請求ができるでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 Bさんは20歳で未成年ではないので,Cさんに対して請求するのは難しいのではないかと思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 確かにBさんは成人していますが,CさんがBさんに車を貸しているのですから,Cさんに対しても請求ができるのではないかと思います。

弁護士の見解

 このケースでは,Aさんは,Cさんに対して,怪我の治療費や慰謝料などの人的な損害に限って,賠償の請求ができると思われます。
 Bさんが成人している以上,Cさんが親としての責任を負うことはありません。しかし,法律(自動車損害賠償保障法3条)では,「自己のために自動車を運行の用に供する者は,その運行によって他人の生命又は身体を害したときは,これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と規定されており,Cさんは,「自己のために自動車を運行の用に供する者」(「運行供用者」)として,他人の生命又は身体を害した人的な損害に限って,賠償の責任を負うことになると思われます。
 「運行供用者」という言葉は聞き慣れない言葉ですが,車の所有者はたいていの場合は「運行供用者」にあたります。
 なお,Bさんの運転していた車は任意保険には加入していませんでしたが,強制加入の自賠責保険には加入しているはずですので,自賠責保険の賠償の上限を超える部分について,Cさんに対して賠償を請求することになります。

Aさんから後日聞いた追加事情

 Aさんは,車を修理したいと思い,修理業者が見積もった修理費15万円をBさんに対して請求したところ,Bさんは1か月間アルバイトをして,15万円を用意してきました。
 Aさんは,その1か月の間,後側が壊れたままの車に乗っていましたが,走行には全く支障がなかったことから,気が変わって,修理はせずにこのままにしておこうと思うようになっていました。
 Aさんは,車を修理するつもりがないのに,Bさんから15万円を受け取ってもよいのでしょうか。

弁護士の見解

 Aさんは,Bさんから15万円を受け取っても問題ありません。
 本件では,事故前にはきれいだったAさんの車の後側が事故によって壊れたのですから,Aさんには,その事故の時点で,修理費相当額の15万円の損害が発生したことになり,Aさんは,その事故の時点で,Bさんに対して15万円を請求するという権利を持っていることになります。
 他方で,Aさんは,修理費15万円を受け取った後に,実際に車を修理するか,そのままにしておくかは,法律上はAさんの自由です。Aさんが,車の修理をしなかったからといって,修理費相当額の15万円の請求権が失われることはないんです。
 ですので,Aさんは,実際に車を修理しなくても,Bさんから修理費相当額の15万円を受け取っても問題ないんです。

※本記載は平成30年8月18日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

法律相談事例一覧に戻る