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交通事故

専業主婦の交通事故の賠償額

交通事故で怪我を負った場合の損害賠償額の算定基準は,1つだけではなく,実は3つあります。1つ目は自賠責保険の基準,2つ目は保険会社の任意保険基準,3つ目は裁判基準です。そのうち,自賠責保険の基準は最低限の賠償を保障するもので最も金額が低くなり,最も高額となる基準が裁判基準です。2つ目の保険会社の任意保険基準は,自賠責保険の基準に多少上乗せがされたくらいになります。

専業主婦の交通事故の賠償額

事例

 36才の専業主婦のAさんは,マイカーを運転中,居眠り運転で対向車線からセンターラインオーバーをしてきたBさんの運転する乗用車と正面衝突をしてしまい,左足を複雑骨折してしまいました。骨折した足の手術も必要で,リハビリも含め6ヶ月の入院が必要となってしまいました。その間,Aさんは,夫のための家事をすることができず,夫に家事の負担をしてもらうことになってしまいました。その上,治療によってもケガを負った足のひどい痛みは治らず,後遺障害として残ってしまいました。壊れた車の価格全額は賠償してもらい,また,治療費は,Bさんが加入していた任意保険の保険会社が全額支払ってくれました。そして,治療終了後,保険会社から怪我に関する示談の提案がありました。保険会社からは,保険会社の基準で計算して,
 ①入院の慰謝料として6か月分の64万2000円
 ②家事の休業損害として1日5700円の損害があったものと計算して180日分の102万6000円
 ③入院中の雑費として1日1100円で計算して180日分の19万8000円
 ④後遺障害の慰謝料として12級の後遺障害を認定して93万円
 ⑤後遺障害による労働能力喪失分として日給5700円を前提に労働能力喪失期間を10年間と考えて224万9100円
この5つの合計504万6200円が賠償金として提示されました。
 この金額は,適正な金額なのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 保険会社が,基準に基づいて算定した賠償金なのですから,さすがに提示された賠償金額は適正な金額だ…と言いたいんですが,交通事故の損害賠償額は,弁護士さんがつくと増額されるって聞きますよね。今回のケースでも,増額になるんじゃないかと思いますが。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 最近,テレビやインターネットでも,交通事故の損害賠償額について,弁護士さんに依頼すると増額されるっていう広告が,沢山出てますよね。やはり私も増額になると思うんですが。

弁護士の見解

 このケースでは,Aさんは,保険会社の提示額よりも損害賠償額が増額されると思います。
 交通事故で怪我を負った場合の損害賠償額の算定基準は,1つだけではなく,実は3つあるんです。1つ目は自賠責保険の基準,2つ目は保険会社の任意保険基準,3つ目は裁判基準です。そのうち,自賠責保険の基準は最低限の賠償を保障するもので最も金額が低くなる基準で,最も高額となる基準が裁判基準となります。2つ目の保険会社の任意保険基準は中間的な基準で,自賠責保険の基準に多少上乗せがされたくらいの基準だと言われています。
 今回のケースの保険会社の提示金額は,自賠責保険の基準と保険会社の任意保険基準をミックスさせた内容になっています。ですので,今回のケースでも,これらより高額となる裁判基準によると,損害賠償額も増額されることになるんです。

太郎さんの質問

 今回のケースでは,どれくらい増額になるんでしょうか。

弁護士の説明

 具体的に計算すると,
①入院の慰謝料
 64万2000円→244万円
②家事の休業損害
 102万6000円→179万5660円
③入院中の雑費
 19万8000円→27万円
④後遺障害の慰謝料
 93万円→290万円
⑤後遺障害による労働能力喪失分
 224万9100円→794万8710円
となり,合計で504万6200円だったものが,1535万4370円になるんです。

花子さんの質問

 3倍以上の金額になるんですか!?
 裁判基準によってくれと保険会社に指摘しただけでは,こういう賠償額の増額は,実現しないのかなと思っちゃうんですが,やはり弁護士さんに依頼しなければ実現しないんでしょうか?

弁護士の説明

 残念ながら,弁護士に依頼されないと保険会社が裁判基準によった示談をすることはないと言わざるを得ないですね。

※本記載は平成31年2月23日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。なお,本記載は令和2年4月1日の改正民法施行前の条項を前提にしています。

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