地域への貢献を目指す安心と信頼の法律事務所 西川総合法律事務所
債権回収

債権譲渡の対抗要件

民法上,債権者は,性質上許されないものを除いて,その債権を自由に譲り渡すことができるとされています(民法第466条)。ただし,債務者は,債権を譲渡した人からその債権を譲渡した旨の通知を受けるか,その通知がなければ自ら債権の譲渡を承諾するまでは債権を譲り受けた人への支払いを拒むことができます(民法第467条第1項)。

債権譲渡の対抗要件

事例

 AさんとBさんは大学時代からの同じサークルの友人であり,BさんはAさんに,よくお金を貸してほしいと無心をすることがありました。
 今回もBさんはパチンコで負けが込んでしまい,消費者金融からの10万円の借り入れが返せなくなったことから,Aさんに10万円を貸して欲しいと頼みました。Aさんは今までよりも額が大きなことから,Bさんにお金を貸すことに躊躇しましたが,最終的にはBさんに10万円を貸してしまいました。
 その後,AさんはBさんに何度か返済してくれるように催促しましたが,Bさんは一向に返済に応じてくれません。
 そんな時,Aさんは仕事で海外に行くことになり,急遽パソコンが1台必要になったことから,大学時代のサークルの先輩であるCさんに相談したところ,Cさんから使っていないパソコンを1台もらえることになりました。CさんはAさんが代金を払うといったのを断りましたが,申し訳ないと思ったAさんは,Bさんにお金を貸していることを思い出し,代金はBさんからもらって欲しい旨をCさんに伝えました。
 事情を聞いたCさんは憤慨しAさんの申し出に快く応じたことから,AさんはBさんに事情を説明した手紙を送り,10万円は自分に払わなくていいから,Cさんに払って欲しい旨を伝えました。
 BさんはCさんが苦手なため,お金はあくまでAさんから借りたものだとしてCさんへ支払いを断りたいと考えています。BさんはCさんからの請求を拒むことができるでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 お金の貸し借りはAさんとBさんの間で行われたものなので,Bさんの同意が無いのに,一方的にAさんの代わりにCさんに支払うようにすることは出来ないと思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 Aさんに支払うとしてもCさんに支払うとしても,Bさんが同じ額を支払わなければならないことには代わりないので,CさんはAさんに代わってBさんに請求することができると思います。

弁護士の見解

 今回のケースでは,CさんはBさんに10万円の支払いを請求できると考えられます。
 まず,Aさんは,Bさんに対して10万円の返還を請求する権利を持っている債権者です。そして,民法上,債権者は,性質上許されないものを除いて,その債権を自由に譲り渡すことができるとされています(民法第466条)。つまり,債権を譲渡するのに原則として債務者の同意は必要ありません。ただし,債権の譲渡は譲渡人と譲受人のみで可能なので,債務者が新しい債権者が誰なのかを知って,二重に支払いをしてしまうのを回避するために,債務者は,債権を譲渡した人からその債権を譲渡した旨の通知を受けるか,その通知がなければ自ら債権の譲渡を承諾するまでは債権を譲り受けた人への支払いを拒むことができます(民法第467条第1項)。
 今回のケースでは,債権の譲渡人であるAさんがBさんに手紙で通知をしていることから,BさんはCさんからの請求を拒むことができず,支払いをしなければならないことになります。
 ただし,手紙で通知をする場合には,通知があったかどうか後でもめないように普通郵便で通知するのではなく,配達証明付きの内容証明郵便などでした方がいいと思います。

花子さんからの質問

 譲渡人のAさんから通知された場合にはCさんに支払わなければならないとのことでしたが,もしもCさんから通知があった場合にはどうなんでしょうか。

弁護士の回答

 今回は実際にAさんからCさんに債権譲渡がありましたが,Cさんが債権を譲り受けたと嘘を言う可能性もあるので,法律上,譲受人からの通知があったとしても譲受人に支払いをする必要はありません。 ただし,CさんがAさんの代理人として通知をしてきたような場合には,通知はAさんの意思に基づくものになりますので,Cさんに支払いをしなければならないことになります(大判昭和12年11月9日)。

※本記載は令和元年9月21日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

法律相談事例一覧に戻る