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離婚

離婚時に決めたことの変更

離婚した場合,結婚して姓を変えた側の姓は,旧姓に戻るのが原則ですが,民法では,離婚の日から3か月以内に届け出をすることによって,婚姻時に使用していた姓を使用することができるとされています(民法767条,戸籍法77条の2)。離婚後3か月を超えている場合は,戸籍法で,「やむを得ない事由」が必要とされています(戸籍法107条)。

離婚時に決めたことの変更

事例

 Aさん(女性)は,20年前に結婚した夫のBさんと離婚して,旧姓に戻しました。Aさんが旧姓に戻すことにしたのは,Bさんやその両親の強い要望があったためでした。
 離婚後,4か月間,Aさんは旧姓を使用して生活したのですが,20年間,Bさんの姓を使って教師として働いていたことから,職場で旧姓の使用が定着せず,婚姻時の姓と旧姓の2つの名前で呼ばれることとなり困っています。また,Aさんは,離婚に際し,Bさんとの間の未成年の子C君の親権者となったのですが,C君は婚姻時の姓のままであることから,親子で姓が異なってしまっています。
 このように,Aさんは,仕事上や日常生活で大きな支障を感じているのですが,Aさんは,いまから,婚姻時の姓に戻すことは出来るのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 離婚したときに,婚姻時の姓を引き続き使いたい場合には,3か月以内に届け出が必要だと聞いたことがあります。ですので,Aさんは,婚姻時の姓に戻すことは出来ないと思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 3か月という期間の制限があったとしても,現実に,仕事や生活で支障があるのであれば,姓を変えることは可能ではないかと思います。

弁護士の見解

 今回のケースでは,Aさんは,婚姻時の姓に戻すことができる可能性が高いと思われます。
 離婚した場合,結婚して姓を変えた側の姓は,旧姓に戻るのが原則ですが,民法では,離婚の日から3か月以内に届け出をすることによって,婚姻時に使用していた姓を使用することができるとされています(民法767条,戸籍法77条の2)。今回のケースでは,離婚後,既に4か月経っていますので,この方法を使うことはできません。このような場合には,一般的な姓の変更方法に従うことになります。
 姓を変更するには,戸籍法で,「やむを得ない事由」が必要とされています(戸籍法107条)。「やむを得ない事由」とは,一般的には,常用漢字ではないため読むことが困難であるとか,長年違う姓を使用し続けていて戸籍上もその姓を使わなければ混乱を招くような場合です。家庭裁判所が「やむを得ない事由」があると判断した場合,姓の変更が許可されます。
 今回のケースで,「やむを得ない事由」があると認められるかについてですが,仕事上,婚姻時の姓が定着していて,旧姓を使用していくことは混乱を招くと考えられますし,C君の親権者として,C君と同じ姓を名乗るために,婚姻時の姓を継続使用する必要もあると考えられます。さらに,Aさんは,離婚後,4か月間しか旧姓を使用していませんので,旧姓の使用が社会的に定着しているとまではいえず,Aさんが婚姻時の姓に戻すことが社会的な混乱や弊害をもたらすことは少ないと考えられます。
 よって,今回のケースでは,姓の変更が許可される可能性が高いと思われます。

花子さんからの質問

 子どもの養育費も離婚するときに決めますが,後から変更することはできるのでしょうか。

弁護士の説明

 一般論としては,養育費を決めたときから事情が変化した場合には,養育費の減額・増額を請求することができます。ただ,当事者の新たな生活設計が養育費の取り決めを前提にしてなされることから,養育費の額の変更には,一定の期間の経過と相当程度の事情の変化が必要とされます。
 養育費の額の変更の際に考慮される事情としては,①父母の勤務先の倒産や病気による収入の減少,職業の変更や社会的地位の変化による収入の増減,②子の怪我や病気による高額な医療費の必要,③物価の急激な上昇などの社会情勢の変化,④父母の再婚などがあります。
 父母の再婚については,養育費を支払う側が再婚して新たな子が生まれた場合のように,支払う側に扶養家族が増えた場合や,養育費を受け取る側が再婚して再婚相手と子が養子縁組をした場合のように,再婚相手が子の一次的な扶養義務を負うこととなる場合などに,養育費の減額請求が認められる可能性があります。
 当事者同士の話し合いで養育費の額の変更について合意ができない場合には,最終的には,裁判所が先ほど挙げたような様々な事情を考慮して,離婚時に決めた養育費の額を変更すべきかどうかを判断することになります。ですので,どのような場合に養育費の額の変更が認められるかを一概に言うことは難しいですが,相当程度の事情の変化があった場合には,減額だけでなく,増額の請求をすることも可能です。

※本記載は平成30年11月10日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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