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離婚

離婚の財産分与(時効・年金分割)

実際上は,財産分与は,離婚時に決められることがほとんどではあります。しかし,法律上は,離婚後でも離婚時から2年以内なら財産分与の請求ができると規定されているんです(民法768条2項但書)。また,財産分与の対象として,預貯金や自宅土地建物などが通常想定されますが,財産分与の1つとして,年金分割の請求ができる点も注意してください。

離婚の財産分与(時効・年金分割)

事例

 Aさんは,会社員の夫Bさんと結婚し,専業主婦として夫を支えてきました。結婚の翌年には,Bさんが2000万円の住宅ローンを組んで,Bさんの名義で,土地を購入し,自宅建物を新築しました。しかし,結婚後しばらくすると,Aさんは,Bさんとの性格の不一致を強く感じるようになり,子どももできなかったこともあって,離婚を意識するようになってしまいました。
 それでも,Aさんは,離婚しても自分には仕事が無く,離婚には踏み切れないまま過ごしていましたが,結婚後15年たった頃,コツコツ勉強して資格を取得し,その資格をいかして就職活動をしたところ,採用してもらえることになりました。
 そして,Aさんが,夫のBさんに,就職が決まり,別居したいと考えていること,離婚に応じて欲しいことを打ち明けたところ,Bさんも離婚を考えていたようで,子どももいないので支障がないだろうということで,離婚に同意してきました。
 Aさんは,離婚してもらえるなら,それだけで良いと考えていたこと,双方の預金額も結婚後特に増えていなかったこと,自宅土地建物の価値も1000万円にまで下がっていて,ローンも600万円残っていたことなどから,Bさんに対して,特に財産分与を求めることなく,双方,離婚届に署名押印し,離婚届を提出しました。
 しかし,離婚後,就職してアパート暮らしを始めたAさんは,思った以上に仕事が大変で,給料も安く,生活が苦しいことを実感し始めました。そして,離婚後1年経って,Aさんは,元夫のBさんに,やはり財産分与をして欲しいと請求しようと考えています。Aさんの請求は認められるんでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 離婚の際の財産分与のルールで,財産を2分の1ずつに分けるというルールがあるという話は,以前この番組でも紹介されていましたよね。自宅土地建物が1000万円の価値があるので,ローンの600万円を差し引きして,プラスの財産は400万円ですよね。だからその2分の1の200万円の財産分与を受けられると思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 でも,今回の財産分与の請求は,離婚後1年経ってからの請求ですよね。離婚時に財産分与を請求していたのであれば,花子さんの言われるとおりのように思うんですが,一旦離婚してしまった後から,財産分与の請求ができるのかな,という疑問はありますね。

弁護士の見解

 今回のケースでは,Aさんは,Bさんに財産分与の請求をすることができます。
 確かに実際上は,財産分与は,離婚時に決められることがほとんどではあります。しかし,法律上は,離婚後でも離婚時から2年以内なら財産分与の請求ができると規定されているんです(民法768条2項但書)。
 そして,その財産分与の内容ですが,花子さんが言われたとおり,離婚の際の財産分与のルールで,財産を2分の1ずつに分けるというルールがあります。これを自宅土地建物についてみると,プラスの財産が1000万円で,マイナスの財産が600万円ですので,差し引きした400万円が財産分与の対象となり,Aさんは,その2分の1である200万円について財産分与を請求できるということになります。

花子さんのコメント

 やっぱりそうなんですね!ということは,私の解答は100点満点ということで良いんですね!

弁護士の説明

 100点満点に近いんですが,実は,もう一つ財産分与の対象になるものがあるんです。
 今回のケースでは,Bさんは会社員で給料をもらっています。通常,Bさんは,厚生年金にも加入しているでしょうから,結婚期間中に国民年金にしか加入していなかった専業主婦のAさんは,Bさんに対して,財産分与の1つとして,年金分割の請求ができるんです。結婚期間も15年間と比較的長期間ですし,その間の年金の掛け金もバカになりませんから,年金分割についても忘れないでいただきたいですね。

※本記載は令和元年8月31日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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