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成年後見

遺産分割協議と成年後見

認知症で判断能力のない相続人がいる場合に遺産分割協議を有効に行うためには,他の相続人の方が成年後見の申立て(民法第7条)をする必要があります。仮に,他の共同相続人が成年後見人に選任された場合には,被後見人と成年後見人とは遺産分割で対立する利益相反の関係にありますので,特別代理人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります(民法第860条,第826条第1項)。

遺産分割協議と成年後見

事例

 AさんとBさんは結婚50年の夫婦で,子どもたちが独立した後は2人暮らしをしていました。ある日,Bさんは認知症を患っていると診断され,その後,病状が急激に悪化したため,病院に入院することになりました。
 また,一方で,AさんはBさんが重度の認知症となったことにショックを受け,体調を崩し,そのまま1年後に亡くなりました。
 Aさんが亡くなった知らせを聞いて,2人の子供であるCさん,Dさん,Eさんが集まってAさんの葬式について話し合いをしました。また,Aさんには,Aさん名義の1200万円相当の自宅土地建物と1200万円の預金がありましたが,これらの遺産分割についても話し合いをしました。この時,Bさんの認知症はさらに悪化し,物事の判断能力が全く無くなっていたため,Cさんたちは,Bさんを話し合いには加えることはしませんでした。その後もCさんたちは,Bさんを話し合いに加えることはありませんでしたが,法律上の相続分に従い,Bさんは自宅土地建物を取得し,Cさん,Dさん,Eさんはそれぞれ400万円の預金を取得する遺産分割をすることに合意をしました。
 このような遺産分割協議は法律上有効なのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 Bさん以外の人は全員出席してますし,Bさんも相続分に従った遺産を受け取ることに決まっていますので,遺産分割協議は有効であると思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 確かに,他の相続人の話し合いでBさんも遺産を相続していますが,遺産分割は関係者全員で話し合いをすることが重要であると思いますので,遺産分割協議は無効であると思います。

弁護士の見解

 今回のケースでは,Bさんが出席していない遺産分割協議は無効であると考えられます。
 遺産分割は,相続人となる者の全員の協議によって行われなければならないもので,当事者となるべき者の一部が参加をしないままなされた遺産分割協議は無効となります。
 今回のケースでも,Bさんが出席しないままになされた遺産分割協議は無効となってしまいます。そこで,遺産分割協議を有効に行うために,今回のケースでは,他の相続人の方がBさんについての成年後見の申立て(民法第7条)をする必要があります。
 成年後見とは,ある人が精神上の障害により判断能力が不十分である場合に,家庭裁判所が成年後見人を選任し,成年後見人が,その人に代わって,その人の財産を管理し,契約などを代わりに締結できるようにする制度のことを言います。成年後見人には,家庭裁判所の判断により,本人の親族や弁護士などが選任されることになります。
 そして,成年後見人は本人に代わり遺産分割協議に参加することもできるため,今回のケースで成年後見人が選任されれば,成年後見人は,Bさんに代わって遺産分割協議に参加することができます。

花子さんの質問

 他の相続人のCさんが既に親族としてBさんの成年後見人になっていた場合には,CさんはBさんに代わって遺産分割協議に参加することができるのですか?

弁護士の説明

 今回のケースでは,BさんとCさんは遺産の取り分をめぐって対立する利益相反の関係にあるといえます。このような場合には,CさんはBさんの後見人として,Bさんに代わって遺産分割協議に参加することはできません。
 この場合には,基本的には,Cさんに代わってBさんのために遺産分割協議に参加することのできる,特別代理人という人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります(民法第860条,第826条第1項)。
 このように,遺産分割協議が有効に成立するためには,今回のケースに限らず,全ての相続人が,実質的に協議に関与する必要があります。遺産分割協議には大きな労力がかかることも多く,後から協議の有効性について争いを生じさせないためにも,協議にあたっては,全ての相続人が話し合いの場に参加できることが不可欠であるといえます。

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