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労働問題

解雇予告手当

労働基準法20条で,雇用主は,解雇をする場合は30日以上前に解雇の予告をするか,解雇の予告をしない場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければいけないと決められています。この解雇の予告がなかった場合に支払うべきお金を,解雇予告手当といいます。

解雇予告手当

事例

 Aさんは,実家を出て下宿をして,大学に通いながら,半年くらいの間,同じファミリーレストランで,アルバイトをしていましたが,ある日,3日後に辞めてほしいと言われて,解雇をされてしまいました。Aさんが理由を聞いても,運営会社の業績が良くないからとかいろいろ言われて,何故解雇されたのか理由がはっきりしませんでした。
 Aさんとしては,解雇されたのは納得がいきませんでしたが,こんな身勝手なことを言ってくる職場に留まりたいとは思いませんでしたので,その後3日間働いた後に,解雇を受け入れることとして,新しいアルバイト先を探すことにしました。
 この話を友人にすると,友人も協力してくれて,新しいアルバイト自体はすぐに見つかって,すぐにでも働くことが出来るようになったのですが,最初の給料日が,締め日と支給日の関係で,翌々月となってしまいました。
 元のアルバイト先からは,実際に働いた日のアルバイト代しかもらえないと言われてしまったので,だいたい一月分の給料が無い状態で,生活をしなければいけなくなってしまいました。
 Aさんとしては,アルバイト収入が毎月あることを前提に生活をしていたので,どうしても生活が苦しくなってしまいます。
 何か,良い方法はないのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 新しいアルバイト先に給与の先払いを求めるのは言いづらいでしょうし,元のアルバイト先で実際に働いた以上の給料を求めるのも出来ないだろうと思います。実家に相談をしたりして,何とか,一月の間,やりくりをしていくしかないのではないでしょうか。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 一方的に,解雇をされたということであれば,解雇の理由があったのかどうかをはっきりさせて,不当な解雇であれば,元のアルバイト先に,何か請求ができるのではないでしょうか。

弁護士の見解

 今回のケースであれば,Aさんは,まず,早急に,解雇予告手当の請求をすべきと考えます。
 労働基準法20条で,雇用主は,解雇をする場合は30日以上前に解雇の予告をするか,解雇の予告をしない場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければいけないと決められています。この解雇の予告がなかった場合に支払うべきお金を,解雇予告手当といいます。
 今回のケースであれば,Aさんは,3日後に辞めてほしいと言われているので,元のアルバイト先が,解雇予告手当を支払うべき場合と言えます。
 ここで,アルバイトであるので,実際に働いていないような場合は,給料のようなものは出ないのではないかという疑問もあるかと思いますが,アルバイトであっても,労働基準法の適用はありますので,解雇予告手当の請求は出来ます。
 本当に1日だけの更新の無いアルバイトであった場合や,懲戒解雇をされた場合などは,解雇予告手当が出ない場合もありますが,今回のケースであれば,解雇予告手当の請求は可能であるといえます。
 そこで,Aさんとしては,最後の給料と一緒に,解雇予告手当の支給を受けることが出来るように,元のアルバイト先と交渉をしておくべきだと思います。
 ここで,元のアルバイト先に,職場側の都合で解雇したのではなく,今回の相談者(労働者)が自主的に止めたのだと言われないように,解雇の通知書を受け取っておくなどしておいた方が良いでしょう。
 そして,そもそも解雇が不当ではないかという問題もあり,解雇の不当性を訴えかけて,それに応じた請求をすることが出来る可能性もあります。しかし,解雇の不当性を訴えかける請求をすることは,労働者側と雇用主側の言い分が対立して,結論が出るまでに手間と時間がかかることが多いです。
 それに対して,この解雇予告手当については,職場を辞める原因が解雇であり,解雇予告がされておらず,解雇予告手当相当分の支払がされていない場合は,解雇の不当性を訴えかけるよりは,労働者側と雇用主側が争わずに支払いがされる可能性があるので,早期の支払いを望むならば,解雇の不当性を訴えかけるより,まずは解雇予告手当の請求をした方が良いと思います。

※本記載は平成30年10月20日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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