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一般民事・商事・家事事件

弁済の提供と遅延利息

お金を支払う債務について,支払期日が過ぎてしまうと,年利5%の遅延利息を付加して支払いをする義務が生じます(民法419条,404条)。その義務を免れるためには「弁済の提供」をする必要がありますが,債権者があらかじめその受領を拒んでいたときには,お金を準備したことを通知してお金を受け取るよう催促するという「口頭の提供」で足りるとされています(民法493条但書)。

弁済の提供と遅延利息

事例

 Aさんは,ギターを買いたいと考え,ギターを何本も持っている友人のBさんにアドバイスをもらおうと相談しました。AさんがBさんの自宅に行って相談すると,Bさんはギターを1本見せてきて「何もお店で新品を買わなくても,このギターでよいなら1万円で売ってあげるよ。」と提案してくれました。そのギターを見て気に入ったAさんは「買いたいです。」と返答。Bさんは「じゃあ,このギターをこのまま持って帰ってくれていいよ。1万円の代金は1週間後に払ってくれればいいから。」と言ってくれました。Aさんは,Bさんにお礼を言って,Bさんから買ったギターを持って帰りました。
 気前よくギターを売ったBさんでしたが,翌日,自分の売ったギターの値段のことが気になって,ネットオークションを見ていると,何とAさんに1万円で売ったのと同じ型のギターが3万円で落札されているのを発見。Bさんは,さすがに1万円は安かったと後悔したようで,Aさんに「やはり代金を3万円にしてくれないか。」と言ってきました。Aさんとしては「今さらそれはないよ。」と断りましたが,Bさんは「それだったら代金1万円は受け取れないな。」などと言って,納得していない様子でした。
 Aさんは,1万円の代金支払いの約束の日の前日に,Bさんに電話し,「代金の1万円を準備したから,明日支払いに行くよ。」と伝えましたが,Bさんは「代金は3万円でなければ納得できない。代金1万円は受け取らない。」の一点張りでした。
 この状態で代金を持参しても意味がないと思ったAさんは,1万円の代金支払いの約束の日には,Bさんのところに代金を持参しませんでした。
 これを契機に関係が疎遠となってしまったAさんとBさんでしたが,それから1年後,突然Bさんは,「ギターの代金は1万円でしょうがないと考えなおしたけど,約束の日に,1万円の代金を払いに来なかったんだから,年利5%の遅延利息を付けて合計1万0500円払ってくれ。」と言ってきました。
 たかが500円のこととは思いながらも,割り切れない思いのAさん。Aさんは,Bさんに遅延利息の500円も支払わなければいけないのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 ギターを受け取ったまま代金支払いまで完了せずに1年も経ったわけですし,ギターを1年レンタルしたって500円では済まないですよね。代金支払いの約束の日に1万円の代金を持参しなかったAさんの落ち度もあるわけですから,500円の遅延利息くらい払わなければいけないんじゃないでしょうか。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 でも,Bさんが1万円の代金は受け取らないと言ってきたから,Aさんは1万円の代金を持参しなかったわけですよね。500円とはいえ,遅延利息を払わなければいけないというのは,Aさんがかわいそうに思うんですが。

弁護士の見解

 今回のケースでは,Aさんは,Bさんに500円の遅延利息を支払う必要はないと思います。
 法律上,お金を支払う債務について,支払期日が過ぎてしまうと,年利5%の遅延利息を付加して支払いをする義務が生じます(民法419条,404条)。
 そして,その義務を免れるためには「弁済の提供」をする必要があり,原則として,債権者宅に現金を持参するなどの「現実の提供」が必要とされています(民法493条本文)。
 しかし,今回のケースのように,債権者があらかじめその受領を拒んでいたときには,お金を準備したことを通知してお金を受け取るよう催促するという「口頭の提供」で足りるとされているんです(民法493条但書)。
 今回のケースでは,Bさんは,あらかじめ代金1万円の受領を拒んでいますので「口頭の提供」で足りるケースだと思われます。その上で,Aさんは代金1万円を準備したことと約束の日に支払いに行きたいと思っていることを伝えていますので,「口頭の提供」も行っていると思われます。ですので,Aさんは,遅延利息の500円を支払う必要はないと思います。

太郎さんの質問

 幸い今回のAさんは遅延利息を払わなくてもよいということのようですが,ケースによっては遅延利息を払わなければいけないんですよね。債権者が代金受け取りを拒絶している場合に,立場が不安定な債務者側としてとれる対策は何かないのでしょうか。

弁護士の説明

 債権者が代金受け取りを拒絶しているような場合には,「供託」という制度があります(民法494条)。これは代金相当額を法務局に預けることで,債権者に代金を支払ったという扱いにしてもらえる制度で,これにより代金支払債務も消滅することになるんです。
 立ち退きを求められていて,家賃や地代の受領を拒絶されている土地建物の賃借人などの場合にも広く使える制度ですので,是非知っておいていただきたいですね。

※本記載は令和元年10月12日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。なお,本記載は令和2年4月1日の改正民法施行前の条項を前提にしています。

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