地域への貢献を目指す安心と信頼の法律事務所 西川総合法律事務所
一般民事・商事・家事事件

無断駐車(罰金・車輪のロック)

無断駐車は不法行為(民法709条)にあたりますので,無断駐車をした人は,駐車場の経営者に損害を賠償しなければなりませんが,特段の事情がない限り,駐車場の経営者の損害として認められるのは,無断駐車をした時間分の駐車料金相当額程度が目安になります。

無断駐車(罰金・車輪のロック)

事例

 Aさんは,用事があって知人宅に車で向かいました。知人宅の近辺に着いてから車を止められそうな場所を探したのですが,時間貸しの駐車場などの適当な場所はなく,月極め駐車場の空きスペースしか見つかりませんでした。その月極め駐車場の看板には,「契約者以外立入禁止。無断駐車は3万円申し受けます。」と書かれていましたが,Aさんは,1時間程度で用事は終わるから見つかることもないだろうと思い,無断で駐車することにしました。
 Aさんが知人宅で用事を済ませて車に戻ると,月極め駐車場の所有者のBさんが,Aさんの車の前に立っていました。Bさんは,Aさんに対して,看板に書いてあるとおり3万円を払うようにと請求してきました。
 Aさんは3万円を支払わなければならないのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 Aさんは看板の内容も確認したうえで無断駐車をしているので,3万円を払わないといけないと思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 無断駐車は悪いことですが,たった1時間程度で3万円は高すぎると思うので,Aさんは支払わなくてもよいと思います。

弁護士の見解

 このケースでは,Aさんは,3万円を支払う必要はないと思われます。
 Aさんの無断駐車は不法行為(民法709条)にあたりますので,AさんはBさんに生じた損害を賠償しなければなりませんが,特段の事情がない限り,1時間の無断駐車で3万円の損害が生じることはないと思われます。Bさんの損害として認められるのは,1時間分の駐車料金相当額程度が目安になりますので,Aさんはその程度の金額を賠償すればよいということになると思われます。
 なお,Aさんは,「無断駐車は3万円申し受けます。」という看板を確認したうえで無断駐車していますが,無断駐車をするかわりに3万円を支払うことを承諾したとまではいえません。ですので,AさんとBさんとの間で,無断駐車のかわりに3万円を支払う契約が成立したともいえず,Aさんが3万円を支払う必要はありません。

花子さんからの質問

 今回は,Bさんは,Aさんが戻ってくるまで待ち構えていましたが,いつもそのようなことはできないと思います。無断駐車をされたBさんの立場としては,無断駐車されたことを発見した時点で,逃げられないように,例えば,Aさんの車の車輪をロックするなどしたいところです。Bさんは,そのようなことをしてもよいのでしょうか?

弁護士の回答

 車輪をロックするという行為は,車が走行するという本来の機能を害することになるので,Bさんがそのような事をすると器物損壊罪(刑法261条)にあたる行為となってしまいます。また,その車止めが原因で車に傷がつくなどした場合には,反対にBさんがAさんから修理代として損害賠償を請求されるおそれもあります。
 他方で,Aさんとしては,特段の事情がない限り,Bさんへの賠償額は駐車料金相当額程度が目安となり,それほど多くの支払いをする必要はなく,一見,無断駐車の不利益はそれほど大きくないように思えます。しかし,ケースによっては,無断駐車は,駐車場営業を妨害するという意味で業務妨害罪(刑法233条,234条)にあたる可能性も否定できませんので,Aさんとしても,このような行為は控えるべきでしょう。

※本記載は平成30年12月15日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

法律相談事例一覧に戻る