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一般民事・商事・家事事件

架空請求と訴訟

架空請求については,「連絡をしないで放っておく」という行動をとるのがベストではあります。しかし,どんな架空請求でも,請求者が,裁判所で訴訟を起こしてしまうと,放っておいてはいけません。民事の裁判所での手続は,訴訟を起こされた側が,一定の期間内に何も反論をしないと,それが真実に反していても,訴訟を起こした側の言い分通りの判決が出てしまいます。

架空請求と訴訟

事例

 数カ月間位,覚えの無い業者から,Aさんに対して,身に覚えのないサイト利用料の請求が続いていました。最初は,携帯電話のメールに届いていましたが,次第に郵便物での請求書が届くようになっていました。請求が始まった頃,不安に思って,記載してあった連絡先電話番号に電話をしようとしたら,身内から,「そうやって電話をしたら,変なふうに言いくるめられて,身に覚えのない支払をすると言ってしまいかねない。連絡をしないで,放っておくのが一番だ。」とのアドバイスを受けて,そのままにしていました。郵便物は,見ると不安になるので,中身も見ないで放っておきました。
 すると,今度は,Aさんのもとに,「○○簡易裁判所」と封筒に記載してある郵便物が届きました。
 裁判所からの文書を受け取ったのは,初めてだったので,Aさんは,何事かと思って中を見てみると,数カ月間続いていた身に覚えのない請求について,請求者である業者が訴訟をするという文書が入っていました。
 Aさんとしては,身に覚えのない請求であるので,放っておいて良いとも思っていますが,裁判所からの文書を,放っておいても良いのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 身に覚えのない請求のメールや請求書を放っておくのはよい判断だったと思います。裁判所からの文書でも,それが本当の裁判所からの文書だとは限りませんので,それで業者に連絡をするのは止めた方がよいと思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 いくら身に覚えがなくても,忘れているだけということも考えられますので,裁判所まで出てくるのであれば,相手方が,どんな根拠を持って請求をしているのか確かめた方がよいと思います。

弁護士の見解

 Aさんは,裁判所から文書が届いた場合には,それを放っておいてはいけません。
 今回のケースは,架空請求といえるものでしょうから,裁判所から文書が送られてきていない時点では,身内の方のアドバイスである「連絡をしないで放っておく」という行動をとるのに問題はありません。
 しかし,どんな架空請求でも,請求者が,裁判所で訴訟を起こしてしまうと,放っておいてはいけません。
 民事の裁判所での手続は,訴訟を起こされた側が,一定の期間内に何も反論をしないと,それが真実に反していても,訴訟を起こした側の言い分通りの判決が出てしまいます。そして,その判決に基づく強制執行も出来るようになってしまいます。
 すなわち,架空請求であったものが,判決に基づく請求になってしまい,身に覚えのない支払を強制されてしまうのです。

花子さんの質問

 裁判所で判決が出されたとしても,後で架空請求だという理由で,争うことはできないんですか。

弁護士の見解

 判決が郵便で手元に届いてから15日間を経過してしまうと,判決は確定してしまい,もはや架空請求を理由に争うことすらできなくなってしまいます。
 判決が出る前であれば,適切な反論をすれば,全くの架空請求については,請求排除が可能ですので,面倒でも,裁判所に反論書を提出すべきといえます。
 但し,架空請求をするような業者がからんでいる場合には,「○○簡易裁判所」と印字された封筒ですら偽造の可能性があるので,電話帳やインターネットなどで電話番号を確認し,本当の裁判所からの文書であるかどうかを,直接裁判所に連絡をとって,確かめた方がよいでしょう。
 そこで,本当の裁判所からの文書であると確認できた場合には,「答弁書提出期限」等という書き方で,反論書の提出期限が指定されているのが通常ですから,その期限内に,反論書を提出すべきです。そして,裁判所から届いた文書は,きちんと全てに目を通して,反論書を作成すべきです。
 また,近くの裁判所で訴訟がされる場合には,なるべく「出頭日」とされている日に,その裁判所に行って,裁判に出頭した方がよいでしょう。遠くの裁判所で裁判が行われる場合には,裁判所の書記官に裁判期日で決まった今後の裁判の予定を聞いた方がよいでしょう。
 そして,最初の裁判の期日で,事前に反論書を提出して,反論をしたけれども,業者側が,新たに証拠を提出する予定であるとか,再反論をする等と言って,争う姿勢を見せてきたら,自分が請求に関する事実を忘れているだけという可能性も考慮して,弁護士に相談するなどして,その後の裁判への対応を考えていくべきです。

※本記載は平成31年3月23日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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