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相続

認知と遺産分割

法律上,相続人全員が参加していない遺産分割協議は,原則として無効になります。しかし,被相続人の死後に認知によって相続人となった人が参加しないまま行われた遺産分割については,例外的に有効なものとされています。そして,認知を受けた人は,他の相続人に対して,代わりにお金の支払いを請求できることが定められています(民法第910条)。

認知と遺産分割

事例

 Aさんは物心ついたときから,母と母の家族と生活をしていて,自分の父親が誰であるのかを知りませんでした。
 ある日,仕事から帰ってきたAさんは,母から手紙を見せられましたが,その手紙には,Aさんの父親は地元の有力者であるBさんであり,Bさんは1年前に亡くなったこと,BさんがAさんを認知した内容の遺言が先日見つかったことなどが書かれていました。
 驚いたAさんは,手紙の差出人であるBさんの親戚に電話をして事情を聴いたところ,手紙に書いてあったことに加えて,Bさんは別の女性と結婚しており,子どももいること,Bさんには多額の遺産があり,既に他の相続人の間で遺産分割がなされたということが分かりました。
 Aさんは,今の暮らしも苦しいため,できればもう一度,自分も加えた形での遺産分割が出来ないかと考えていますが,法律上,Aさんは,遺産分割をやり直すことを請求することが出来るでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 今回のケースでは,Aさんはもう一度遺産分割をすることを請求できると思います。遺産分割協議は相続人全員で話し合いの機会を持つことが重要だと思いますので,相続人であることが判明したAさんを加えていない今回の遺産分割協議は無効になると思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 私は,Aさんがもう一度遺産分割を請求することはできないと思います。確かにAさんは相続人ではありますが,遺産分割協議をした時点では,他の相続人の方は,Aさんが相続人であるとは分からなかったので,もう一度協議のために他の相続人の方に負担をかけることはできないと思います。

弁護士の見解

 今回のケースでは,Aさんが遺産分割協議を行うことを請求したとしても,他の相続人の方は応じる必要はないと考えられます。
 法律上,確かに相続人全員が参加していない遺産分割協議は,原則として無効になります。しかし,被相続人の死後に認知によって相続人となった人が参加しないまま行われた遺産分割については,例外的に有効なものとなります。そして,認知を受けた人は,他の相続人に対して,代わりにお金の支払いを請求できることが定められています(民法第910条)。
 このように,法律上,遺産分割をやり直すことなく,認知を受けた人と他の相続人の間での利害の調整ができるように,規定が置かれています。
 なお,認知を受けた人が請求できる額は,自己の相続分の相当額とされていますが,法改正により,被相続人の子である限り,相続分について差が生じないようになっています。

花子さんの質問

 もし,今回,BさんがAさんを認知していなければ,Aさんは他の相続人への請求が出来なくなるのですか。

弁護士の説明

 認知を受けていない限り,Aさんは相続人になることはできず,他の相続人へお金の支払いを請求することも出来ません。
 しかし,Bさんが死亡した後であっても,Aさんは認知の訴えを提起することで,認知を求めることが出来ます(民法第787条)。この訴えについては,身分関係を速やかに安定させるために,父が死亡した日から3年以内に提起することが必要とされています。

※本記載は平成31年2月16日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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