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相続

遺言執行者

遺言を作成する際には,遺言の内容を実現するために必要な職務権限を与える人を遺言で指定することができます。この権限を与えられた人は,法律上,「遺言執行者」と呼ばれています(民法第1006条)。この遺言執行者には,未成年者や一部の破産者を除いて,誰でもなることができるんです(民法第1009条)。

遺言執行者

事例

 Aさんには,Bさんという人格者で物知りな知人がいました。Aさんは,最近になって体の不調を感じることが多くなったため,Bさんに遺言に関して相談したいと考えていました。
 AさんにはCさんとDさんという二人の子供がいますが,Cさんは病気になったAさんにとても献身的に尽くしてくれたため,Aさんは自分の持っている財産1000万円のうち,評価額750万円の自宅不動産を遺言でCさんに譲渡したいと考えていました。しかし,Cさんが特別に自宅不動産を受け取ることになると,Dさんがきっと反対をするだろうとAさんは考えたため,自分が亡くなった後,自分に代わって,Bさんに譲渡のための手続を取ってもらいたいと思い,AさんはBさんに,自分が亡くなった後のことをお願いしに行ったところ,Bさんは快く承諾してくれました。そこで,Aさんは,Bさんに自分が亡くなった後の財産の譲渡などの相続手続を代わりにやってもらうようお願いする文面の遺言書を作成しました。
 法律上,Aさんは,遺言書で,Bさんにそのような手続を取ってもらうよう定めることは有効なんでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 相続に関することは相続人の間で決める必要があると思います。また,Bさんは,法律の専門家の弁護士ですらありませんので,Aさんは自分が亡くなった後のことを遺言でBさんに頼むことはできないと思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 遺言は亡くなられた方の最後の意思で,とても重要なものであると思いますのでこれを実現することを遺言でBさんに頼むことは出来ると思います。

弁護士の見解

 今回のケースでは,知人のBさんに相続手続を依頼する遺言書の定めは,有効だと思います。
 遺言を作成する際には,遺言の内容を実現するために必要な職務権限を与える人を遺言で指定することができます。この権限を与えられた人は,法律上,「遺言執行者」と呼ばれています(民法第1006条)。この遺言執行者には,未成年者や一部の破産者を除いて,誰でもなることができるんです(民法第1009条)。したがって,今回のケースでもAさんは知人のBさんを遺言執行者とすることができるんです。
 そして,遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされています(民法第1012条第1項)。その上で,遺言による遺産の譲渡についても,法律上の「遺贈」(民法第964条)として有効に行うことができることから,Bさんは,Aさんの土地をCさんに譲渡するために必要な手続を取ることができるんです。

花子さんの質問

 遺言執行者になった人は,遺言に書いてあることなら何でも手続を取ることができるんでしょうか。

弁護士の回答

 遺言書に書いてあることを何でも実現できるというわけではありません。遺言執行者は,確かに遺言の執行に必要な行為をすることができるんですが,遺言書に記載をすることで法律上の効力が発生する事項は,認知(民法第781条第2項)や遺贈に関することなどいくつかのものしか認められていないため,これらの行為以外について遺言執行者は関与をすることはできません。
 したがって,例えば,遺言書で葬儀の方法を指定したとしても,遺言執行者には指定された葬儀方法を実現するための権限はなく,相続人に対して,指定された葬儀方法を取るように事実上お願いすることくらいしかできないんです。

※本記載は平成31年3月2日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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