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相続

相続財産となった空き家の管理

遺産分割協議が整うまで,遺産は相続人全員の共有になります。そして,民法では,相続財産に関する費用(遺産分割未了の実家の庭の草木の管理費,固定資産税,火災保険料,修繕費など)は相続財産から支出することになっていることから(民法885条1項),相続財産を管理するためにかかった費用は相続財産から支出することになり,相続人全員が負担することが前提となっています。

相続財産となった空き家の管理

事例

 Aさんの母親が1年前に亡くなり,Aさんは,2人の兄と遺産分割について,話し合いをしていました。Aさんの父親は5年前に亡くなっており,Aさんの母親の相続人は,Aさんと2人の兄でした。Aさんの母親の遺産は預貯金と母親が1人で住んでいた自宅ですが,話し合いの結果,預貯金は3等分したものの,母親が1人で住んでいた自宅についてどうするのかなかなか話がまとまりませんでした。Aさんは,それぞれの兄弟はみな結婚して自分たちの自宅を持っているので,実家は売却をして,そのお金を3等分すればどうかと考えていましたが,2人の兄は兄弟が集まれる実家は残しておきたいと考えていました。
 実家をどのようにするのか話がまとまらないままだったところ,兄からAさんに連絡があり,実家の庭に植えていた草木の管理を業者に依頼してその費用を支払ったので,その費用の3分の1を支払って欲しいと言われました。実家は空き家になっていることから今後も継続して庭の草木の管理をお願いするつもりなので,今後も継続的に費用の3分の1を支払うようにも言われてしまいました。
 Aさんは,自分は実家を売却して欲しいと考えているにもかかわらず,今後の庭の管理費用まで支払わなければいけないのか疑問に感じています。
 Aさんは,実家の庭の管理費用を負担しなければいけないのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 事前にAさんに何の連絡もなく,勝手にお兄さんが草木の管理を依頼しているのですから,費用はお兄さんが持つべきではないでしょうか。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 たしかにAさんのお兄さんは,Aさんに何の相談もなく草木の管理を依頼していますが,遺産分割の協議が整っていない以上,実家はまだ兄弟全員のものといえると思いますので,管理のためにかかった費用は兄弟みんなで負担しなければいけないのではないでしょうか。

弁護士の見解

 今回のケースでは,Aさんは,庭の管理費用の3分の1を負担しなければいけないと思います。
 まず,遺産分割協議が整うまでの実家の所有者が誰になるかですが,これは相続人の共有ということになります。つまり,相続人であるAさんたち3人が3分1ずつ権利を持っているということになります。そして,民法では,相続財産に関する費用は相続財産から支出することになっていることから(民法885条1項),相続財産を管理するためにかかった費用は相続財産から支出することになります。つまり,相続人全員が負担することが前提となっているんです。事前に相談がなく,相続人の1人が管理費用を支払ったとしても,相続財産の管理に必要な行為だったのであれば,他の相続人はその費用を負担しなければなりません。
 今回のケースでは,預貯金はすでに3等分されていて,実家の他に遺産はないということなので,庭の草木の管理費用は実家を売却した際のお金から支出するか相続人がそれぞれの持ち分に応じた3分の1を支出するかということになりますが,いずれにしろAさんも庭の草木の管理費用の3分の1を負担しなければならないことに変わりはありません。お兄さんたち2人が実家の売却に反対していることからすれば,庭の草木の管理費用を支払ったお兄さんにその3分の1をAさんが支払うことになるのではないかと思います。

太郎さんの質問

 相続財産に関する費用というのは他にどのような費用が考えられるのでしょうか。

弁護士の説明

 相続財産の管理費用でいえば,不動産の固定資産税や火災保険料,修繕費など様々なものが考えられますし,管理費用以外でも相続財産の清算のためにかかった費用,例えば不動産の鑑定料なども考えられます。
 ただし,相続税は遺産を取得した人が負担するものなので相続財産に関する費用には含まれません。

※本記載は平成31年4月27日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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